10cmの段差解消リフォームの間はホテル住まいで【Vol.055】
リフォームをするにも引越しをしなければならない時がある
小田さんからの電話
東京のマンションでひとり暮らし小松さんはバリバリのキャリアウーマンです。お母さんは信州の長野に住んでいて、やはりひとりで暮らしています。ときどき上京して、小松さんのところに泊まりに来ます、冬の間は雪かきが大変になってきたので春になるまで小松さんと一緒に東京で過ごすことにしました。築年数を経たマンションなので、水廻りを全部替えたいと常々思っていた小松さんですが、ちょうどよい機会なので、大改築をすることにしました。
小松さんのお宅の状況を知るため現場調査することになりました。玄関の靴脱ぎと廊下の段差が10cmあります。左手の部屋は小松さんの寝室で廊下から10cm下がります。右手に廊下と同じ高さで、洗面、トイレと続きます。廊下のドアを開いて、LDKに入るのに、また10cm下がります。LDKに続く和室と洋室は少しですが、それぞれ1.5cmずつ高くなっています。部屋よりも廊下を含む水まわり部分の床が10cm上がっているのは、水まわりの排水管が床の下を通っているためにパイプの分だけが上がっているのです。
マンションリフォーム前
部屋に入る(上る)、出る(降りる)LDKに入る(上る)、出る(降りる)、そのたびに上ったり降りたりしなければなりません。特にドアを開いてすぐの段差はつまずいたり転んだりと危険です。全部の部屋を水まわりの部屋に合せて高くし、段差を無くす提案をしました。LDKの床を10cm上げるのであれば、キッチンのシンクを少し移動することも可能です。シンクの排水管の水勾配をとることが出来るのです。小松さんがおっしゃるとおり、昼にひとりで過ごすお母さんは窓のない部屋で過ごし誰もいない南側の部屋にさんさんと陽が入ってきます。
話をしているうちに、スケルトンリフォームをしよう、ということになりました。スケルトンとは躯体を残して裸にすること。柱・梁の構造物だけにしてしまうことです。スケルトンにしてしまったからといってマンションは一戸建てと違って、制約があるので浴室やトイレ、洗面、キッチンなど排水をともなう場所は別のところにもって行ったりはできません。
段差をなくす
床の高さは、全部同じ高さで、玄関から10cm上ったところで統一することになりました。
出来るだけ引戸にする
ドアの多い生活でしたが、お母さんのためだけではなく小松さんにとっても引戸は使いやすい戸なのでした。半分だけ開けておいたり、ちょっとだけ開けておいて風を通すことができるし、ドアを開けるのに後退りするということもありません。トイレも引戸にしました。
浴室はバランス釜式をやめてユニットバスに
浴室内にバランス釜の給湯器が入っていたので、浴槽は小さくまたぎあったのを浴室外に設置することで、ユニットバスが入れられて、浴槽も大きくなりました。勿論、手すりをつけても充分な広さです。
母室は小さく、押入れは大きく
冬の間中とはいえ、やはりお母さん専用の物入れは必要です。お友達が来たときの泊まり布団も入れなくてはなりません。母室そのものはベッドが一台入って満員のベッド部屋のようすですが、リビングと畳コーナーの角地の部屋は引戸にしたので普段はこの引戸を開けっ放しにしておきます。食事をするときは引戸を閉めればよいのです。
床の間と畳と障子
畳コーナーは畳が3枚敷いてありますが、実は2帖分しかありません。目の錯覚のための3枚敷きです。ついでに床の間もつくりました。畳は足ざわりも良いし何かうれしいですね。お母さんはさっそくここにコタツを置きました。床の間は花を飾ったり、人形を飾ったりと楽しむことができます。そしてリビングルームには、カーテンではなく障子を設置しました。床材のコルクにもよく合います。
さて、スケルトンリフォームをすることになった小松さん。ランチを食べながら打ち合わせを行い、工事期間は7月1日から30日までの1ヶ月と決まりました。マンションのリフォームは戸建と違って天候に左右されないし、柱や梁の構造体に煩わされることがないので、通常1ヶ月くらいの工期があればよいのです。
お母さんは信州の自分の家にいますが、小松さんは住まいながらのリフォームなってしまいます。あまり長い時間はかけられません。ということで工事中の仮住まいを探しました。仮住まいはマンションに近いところがよいので、一緒に駅前の不動産屋さんに行きました。窓に貼り付いた間取りと家賃を見比べて、家賃10万円のところを見ました。敷2、礼2、前1とあります。
−え?こんなに払うの?
とふたり。これは敷金2ヶ月、礼金2ヶ月、前家賃1ヵ月という意味です。10万円の部屋を借りるのに先に50万円の用意が必要です。不動産屋さんに頼みました。1ヶ月間だけだから礼金なしにして、と。不動産屋さんは1ヶ月間だけなんて家主は損だから貸し渋るとのこと。1ヶ月で出たらまた借りる人を探さなければならないからだそうです。50万円に荷物預ける代もあるし、、、としょんぼりして歩いていると、私たちの目に写ったのは小松さんのマンションのお向かいにあるビジネスマンションです。お昼にランチを一緒に食べたところです。
それ!とフロントに駆け込みました。バス、トイレ付きで1泊9000円、長期の場合は割引がありますとのこと。なんと朝食つきです。「夢みたい」
ホテル滞在中は打ち合わせはロビーで堂々としました。「ねぇ、出張してホテルに泊まった時には気が付かなかったけど、毎日シーツと枕カバーが新しいものに換えてくれてるの。お風呂もトイレも毎日掃除してくれるの」
ひとり住まいだからこそできる贅沢ですね。
マンションリフォーム後