“オーマ”のバリアフリー 〜間取り編〜 【Vol.038】
暮らしやすい家にリフォームする

「オーマの家をリフォームしてほしい」と、娘の美恵子さんが相談にみえました。 「オーマ」は美恵子さんの母親の厚子さんのことで、美恵子さんの子供達は、「お婆ちゃん」と呼ばずに、大きいママ、オーママから、「オーマ」になったとのこと。 以来、孫たちばかりでなく、厚子さんの娘、美恵子さん夫妻も息子夫妻も、みんな「オーマ」と言うようになったのだそうです。
厚子さんの家は、最寄の私鉄の駅から歩いて10分ほど。商店街を抜けたところにありました。築40年の和風住宅です。築年数にしては、随分きれいなのでお聞きしたところ、昭和40年に新築し、家族が増えたので昭和50年にはリビングを広げ、和室6帖とトイレを造った。60年に浴室と台所を改築、そして平成1年にはキッチンをシステムキッチンに、リビングをフローリングにリフォームしたという。ほぼ10年に一度大掛かりに手を入れているのです。手入れの行き届いている住まいは、お肌の手入れと同じく、ピーンと張って凛としています。
住まいを全部見せてもらったあと、リフォームをしたい場所を聞いてみました。
希望に合ったリフォームプランとは?
厚子さんの年齢は67歳。現在和室6帖を寝室にしているが、“将来に備えてベッドにしたい”が一番目。 二番目に浴室の釜が古くなったので、釜を新しいものと替えなければならなくなったので、この際美恵子さんが快適だというユニットバスにしたい。寝室から入るトイレを新しくしたい。ということでした。
ここで美恵子さんが「オーマ、イスをどかすのがいやと言ってたじゃないの」と一言口をはさみます。イスをどかす?
オーマの家には孫たちばかりでなく、近所の方達や、サークルの友人達がしょっちゅう尋ねてみえます。お茶を飲んだり、食事をしたりする食卓は、巾1800×奥行900と大きく、松本民芸家具で、厚子さん自慢の大テーブルです。ここに腰をかけてもらうのですが、他の人が廊下に出るたびに、立ち上がってイスをどけなければなりません。帰ってきたときも、やはり立ち上がらなければなりません。これを何とかしたいと考えていたのに、質問されるとうっかりしてしまったのです。
家をリフォームしたい、と考えている人は具体的に浴室をこうして、玄関をああしてと、きちんとした考えをもっている人はほとんどおりません。“何となく不便”とか“散らかる”とか“使いにくい”といった漠然としたことを思っているだけで、きちんと説明できない“もやもや”とか、もどかしさがあるのです。
そのため私は、住まい全体を見せてもらい、不満をとくに感じていることをひとつふたつお聞きして、あとは厚子さんの心の中にある引出しの奥の不満を打ち合わせの会話を通して引き出すのです。そしてその不満を引き出すための投げかけのプランとして、A・B・Cプランを作ってみました。
プラン別リフォーム案を出す事で、施主様にも考える楽しみを

A〜Cプランのうち、Cプランについて厚子さんが述べたこと
- 対面キッチンはいいわね
- 広い部屋がたくさんあるのに、よりにもよって一番狭い部屋で寝るなんて嫌
- お客様をキッチンか洋室からでないとダイニングに通せないのは嫌
- 洗面室にトイレがあるのは良い
- キッチンに大回りしていくのは不便
といった不満や要望がでました。そして考えたのが次のDプランなのです。
Dプランについて

上の図のような余り部分は何の役割りもしないし、見た目も美しいとはいえません。
- 洋室を寝室は駄目です。和室8帖と洋室をつなげて、正月には家族中が集まって新年を祝い、お盆にはやはり家族中で法要をします。Cプランで和室が6帖になっていましたが、あれでは駄目。
- オープンキッチンは嫌。汚れた鍋を見ながら食事はしたくない。
- 洗濯機は一人暮らしなので、毎日は使いません。洗面室にあるのは美しくありません。トイレは、私用のトイレをください。それも寝室から入れるトイレでなければ困ります。
Dプランぐらいまでになると、厚子さんの引き出しから日々考えていて、言葉にならなかったことがらが、次々に出てきます。と同時に、私の頭の中にも厚子さんの引き出しの整理が少しずつできるようになります。
ボールは、キャッチボールをすることにより、私のもとに戻ってきます。言葉も同じこと。こちらから、一方的にバンバンと提案を投げていたのでは、ちっとも戻りません。
- キッチンはオープンでは駄目。かといって対面にはこだわらない。
- トイレは2箇所。1箇所は寝室から。年齢を重ねると夜中に何度かトイレに行く。
- 洗濯機は、子育ての終わった人は食事を作りながらとか、入浴中に洗濯はしなくても良い。毎日洗濯はしないから。
Fプランについて

私「寝室10帖では広すぎますか」
厚子さん「このように広い寝室で就寝するのが夢でした。着替えもできますね。クローゼットがほしいです。」
私「キッチンはもとのところになりましたが、今よりも狭くなりますが逆に使い勝手がよいです。」
厚子さん「シンクが見えないように戸をつけたい。普段使う食器はキッチンへ。見せたい食器はダイニングに置きたい。」
私「お客様用のトイレは、もとの場所なので、リフォームしないでこのまま使いましょう。」
厚子さん「では、手洗いだけでも新しいものにして、カウンター下にトイレットペーパーや手拭きを保管できるものを選びましょう。」
厚子さん「廊下の物入れはなしにしますから、廊下に曲がるときに眺めるしっくいの壁は、とても好きです。このまま残します。」
私「そうですね。物入れは、2階にもたくさんありますね。4.5帖のキッチンを改めてプランし直しましょう。」
厚子さん「洗面化粧台は、巾1200のものを入れたいのですが、よろしいですね。」
私「えっ!それでは、1坪のユニットバスを考えていたのですが、洗面室が大きくなると、0.75坪タイプになります。」
厚子さん「0.75坪ってどのくらいの広さですか?」
私「どのくらいって、一緒に見に行きましょう。」
というわけで、これからユニットバスのショールームに出掛けることになりました。




