心の音を出す階段 【Vol.012】
前回は子供部屋の話をしましたが、今回は子供を育てる階段のお話です。
以前、施主の落合さんと階段をどの位置に持っていくかという打合せをした時のこと。
「玄関から入ってすぐの廊下に階段があるのはイヤね。」という話になりました。
建売住宅によくあるプランの階段の位置です。
これですと、「ただいま」と子供が帰ってきて、まっすぐ自分の部屋に直行されることがあり、子供の様子がよくわかりません。
キッチンで洗い物をしている時だったりすると、階段を駆け上がる足音が水音でかき消されてしまうので、友達も一緒に来ているのがわからなかったりする場合もあります。
そこで、「リビングにある階段というのは、どうでしょう。」と落合さん。
なるほど。自分の部屋に行くのに、必ずリビングを通らなければいけないというのは案外よいことかもしれません。
でも私は反対です。
家の住まい方からいくと、階段がリビングにあるのは夏はよいのですが、冬はリビングを暖めた空気が、全部階段をのぼっていってしまうので、暖めても暖めても寒いリビングになります。それにうるさいです。
実は階段の昇降というのは、結構、足音が響いてうるさいのです。
しかし、この足音というのは子供の様子を知るのに一番わかりやすいものでもあります。
元気な時は「とんとんとん」と弾むようなリズムですし、元気のない時は「ずうずうずう」と引きずるような音です。
それでその日の子供の様子を伺います。
子供の様子を伺うのに私のおすすめの階段の場所は、キッチンまわりです。
落合さんの階段は、キッチンの後ろ側にとりました。
玄関からまず、リビングを通ってキッチンにいる母親と声をかけあって、キッチンの後ろの階段を昇ります。
母親に、にっこり笑顔で挨拶のあとに、階段を昇るのが「ぽんぽん」という音なら元気な印、「ずるずるー」の音の場合は、今日学校で何かあった印。
そんな時は、帰って一段落したあたりに、おやつを出して、さりげなく聞き出してみよう、と思うこともあるようです。
前回手掛けたお施主様の家の階段は、キッチンの右隣です。
玄関を通って、横顔で母親とただいまの挨拶をして、階段を昇ります。
母親が見ている踊り場までは、いつも元気でとんとんと昇っていき、踊り場から折れ曲がって、母親の視線が届かなくなったところから、注意して足音のリズム判断をするそうです。
そこはやっぱり母親。「から元気なのか、本元気なのかが手に取るようにわかるのよ。」とのこと。
階段は、母と子の見えないコミュニケーションの場でもあります。
家相家の小池康壽さんは、「階段は子供の心の音をあらわす打楽器です。」と、名言されました。私もまったく同感です。
今日の心の音はどう判断しましたか?




