温故知新のエスプリ 〜親子三人暮らし@パリ〜 ワールドハウジング Vol.12

エッフェル塔や凱旋門、歴史的モニュメントが数多く立ち並び、街そのものが博物館とうたわれる都、パリ。街は見事な区画整理がほどこされ、通りの大小すべてに名前がつけられています。約105km2の面積に210万人以上が暮らし、ところ狭しと軒を連ねるアパルトマン。通り沿いからその入り口を抜けると、中庭を抱くようにロの字型の奥行きのある住居スペースが広がっています。これが、遠い昔から姿を変えることのない典型的なパリのアパルトマンの姿です。
建物は古くても、快適な生活はできる。
パリのアパルトマンは大別して二種類。1960年代後半から70年代初めの大規模な都市開発により建築されたパリ近代建築と、それ以前の古い建築物です。
例えばパリ3区のマレ地区では、フランス革命以前の古い建造物が、今も人々の住まいとしての役割を果たしています。
近代建築の長所は、バスルームやキッチンなどの水周りや暖房などの機能性が優れており、始めから便利な暮らしができる点にありますが、物件の数が古いアパルトマンより少なく、またコンクリートの外観に味気なさを感じる向きもあるようです。
一方、古いタイプのアパルトマンは、機能性こそ近代建築にはおよびませんが、そこに生きてきた人々の暮らしのアイデアや歴史を引き継ぎつつ、ライフスタイルに合った快適な暮らしを考え、部屋を作り変えていく楽しさがあります。そしてそれこそ、パリの多くの人々が実践している生活です。古い物を大事にしながら、ちょっとした工夫やリフォームで、暮らしはいくらでも快適になるということをパリの人々は知っているのでしょう。


左)エッフェル塔
中央)近所のサン・タンブロワーズ教会、教会を中心に人々の住まいが広がっています。
右)駅前の様子、この日はメーデーでにぎわっていました。
フランス人は日曜大工がお好き
パリに限らずフランスでは、しばらく手入れされていなかった物件に入居する場合、リフォームをしないと生活がスタートできないケースが多く、賃貸物件であっても一般的に改装には寛容です。そんなお国柄から、フランス人には日曜大工愛好者が多く、プロ顔負けの工具を取り揃えて大規模な改装に挑む人から、気分転換にちょっとした部屋の模様替えを趣味にする人まで、部屋のリフォームはごくごく当たり前のこと。リフォーム会社ももちろんありますが、水周りなどの難しい部分以外は、ほとんど自分達で手がけてしまうケースも珍しくありません。
暖房設備以外は自分達で
今回の訪問先は、ファブリスさんと日本人の奥様みほさん、そして7ヶ月になる愛娘りりあちゃんの3人家族。
お住まいは、マレ地区のお隣、パリ11区のVoltaire駅から歩いてごくわずか。駅前にスーパーマーケットや生活雑貨店などが立ち並び、他の地区に比べてツーリストの姿が少なく、穏やかな居住エリアです。彼らの住むアパルトマンは、時代とともに何度も改装を繰り返し、その時その時の人の暮らしに適うよう、姿を変えて今に至る古い建物です。
寝室、サロン、キッチン、バスルームから成る彼らのアパルトマン。おばあさんが一人暮らしをしていた場所を引き継いで入居した2002年当時、若いカップルが生活を始めるためには、あちこちをリフォームする必要があったとか。暖房設備以外はすべて自分達で手がけ、費用は40万円ほど。

左)玄関からのぞいたサロン、入り口にはたくさん映画の写真が。
右)折りたたみ式の棚を作ってスペースを活用、同じタイプの物がバスルームにもあります。

左)キッチンの水周りも手がけました。
右)改装後のキッチン、流しの下の収納扉は明るいピンク色に
悪戦苦闘のバスルーム
ご夫婦がとりわけ大変だったとおっしゃるのは、バスルーム。
バスタブ交換から、カビの生えていた床や天井の張り替え、トイレの便器設置、シャワーカーテンのレールの設置など、何から何までリフォーム。バスルーム自体が直線的な形ではないため、ビニール製の床シートを型どおりに切り抜く作業に四苦八苦、トイレの水洗装置がうまく作動しない、バスタブの下に設置した収納スペースの扉にタイルがうまく貼れなかった等々、苦労話が尽きません。
水漏れ跡が目立っていた天井張り替えに至っては、腕を痛めて重たい板を取り付けたものの、作業後にスチロール製の軽量板を販売しているのを発見!ちょっとがっかりしたというエピソードも。りりあちゃんが生まれてからは、おむつ換えや入浴後のお手入れに便利なよう、壁面に蝶つがいを用いて折りたたみ式のテーブルも設置しました。思い出話がつまったバスルーム、今ではみほさんにとって一番のお気に入りスペースです。

左)バスタブの下につけた収納に注目、ご夫婦のアイデアです。
右)苦労したという問題のトイレ、水漏れしないように排水管をセメントで固めています。
赤ちゃんを守るサッシタイプの窓

フランスのクラシックな窓は、枠が木製の観音開きタイプ。開閉は、中央に付いた取っ手をまわし、カンヌキを上下移動させて窓を固定するという簡単な作りのため、すきま風や雨漏りなどの不便が多く、何より古いので木の腐食が進んで見栄えも悪いのが実状。サッシタイプの窓と比べて断然機能性もおとります。お二人は、この古い窓を取り払い、寸法を測りサッシタイプのしっかりした窓を購入。今では外気からしっかり守られているので、窓際にベビーベッドを置いても安心です。
ファブリスさんのお気に入り
入居当時にあった派手な壁紙と色あせたカーペットは、それぞれペールブルーと白を基調とした壁と、フローリングの床に張り替えられました。心機一転、今では落ち着いた雰囲気の部屋になりました。清潔感のあるつるりとした感触のフローリングが、ファブリスさんのお気に入りです。
今後は、「サロンのすぐ横で眠っている子どもをうっかり起こしてしまわないよう、防音のパーテーションをどうするか思案中」とみほさん。お子さんの成長に合わせたリフォーム、アイデアは尽きません。


左)ドアのペンキ塗り、壁を塗るのはこれからです。
中央)白とブルーを基調としたやさしい色合いの壁
右)壁に飾る絵もブルーで統一


左)サロンのランプも自分達で取り付け
中央)フローリングの床貼り作業をするファブリスさん
右)生まれ変わったピカピカの床








