緑溢れるイギリスのガーデニング ワールドハウジング Vol.1
英国といえばガーデニング。通り沿いの窓辺からマナーハウスの庭園まで、木々花々で飾ることはイギリス人にとって生活の一部ともいえるでしょう。 最近で、イギリスではインテリアトレンドの影響を受けて、家の前庭にはフランス風の幾何学的な庭や砂利を敷き詰めた、日本庭園をまねる人も多いようです。でも、バックガーデン(家の裏にあるメインの庭)の主流は断然自然派。豊かに溢れる緑を存分に楽しむがイギリス流です。 そこで今月は過去15年以上に渡ってガーデニングを楽しんでいらっしゃる、ロンドン市内のモアさんのお宅をご紹介します。

左側に見えるフェンスは今年の冬に新しくしたため、クレマチス、ジャスミンなどが育つのを待っているそう。 。
小さな庭園のカラーコーディネートは、色のリンクがポイント



取材をしたこの日は、6月の日差しに輝くお庭は白いバラが咲き乱れ、これぞイギリス!という光景が広がっていました。キッチンの開け放たれたドアを抜けると、そこにはオープンプランではなく、小さな庭園に分かれた秘密の花園が広がります。
キッチンに隣接しているのはパティオ。チーク材のベンチと大小さまざまな植木鉢が並び、そこから階段を下りると円形芝生の庭、右手にアーバー(屋根つきのベンチ)、正面にはガゼボ。その奥にはさらにアーチが二つ並ぶ楕円形の小さな庭が続きます。
写真はパティオにあるベンチ。カメオをひとつ飾ることで後ろの壁が際立っている。
アーチをくぐるとそこはモアさんの舞台裏、道具小屋などがひっそりと隠されています。モアさんのお庭は南向き幅8メートル、奥行きが25メートルほど。それがこれだけの区画に分けられているのです。
さらにひとつの区画が小さなコーナーに分けられ、それぞれがお互いを引き立てあう造りになっています。中心となる円形芝生の周囲は四等分に分けられ、白&紫、白&ブルー、赤紫&ピンク、そしてピンク&紫と、色がリンクするように花が植えられています。
階段の脇のピンク&紫のエリア。アンティークのジョウロ、チムニーポット、そして小さな少女の彫刻が美しい絵になっている。
アーバー(屋根つきベンチ)と白x紫のコーナー。右手奥には彫刻がひっそりと立つ。
花の咲く時期、日当たり、葉っぱの緑の濃さを踏まえて、色分けをするというのは庭造りの基本というのがモアさんの考えとか。 そして目を凝らすと、そのカラーコーディネートされた花壇の合間には彫刻やオーナメントが顔を出したり、ジョウロがさりげなく置かれていたり…。見れば見るほど発見があって、飽きることがありません。


アンティーク小物と立体的に組み立てた庭に広がる風景


使われている小物は素朴なアンティークばかり。全てジャンクショップやチャリティーショップで見つけたものだとか。約20年間、イギリス全国を旅行する度にコツコツとコレクションを続けたたまもの、一朝一夕のものではないのですね。 例えばチューダー朝の陶器のビンは北イングランドはノーサンバランドから、女性の半身像は南海岸のボーンマス、その台は南西イングランドのウィルトシャーから…といった具合です。
写真は北イングランドのジャンクショップで購入した1932年の刻印が見えるミネラルウォーターのボトル。
女性の半身像。後ろの塀が今年の冬に新しくなったばかりでちょっと寂しそう。麦藁帽子をかぶせるのもセンスのうち。
モアさんのセンスのよさから、小物たちがすっかり植物になじんでいるのですが、それは庭の一角一角が非常に立体的な組み立てだから。まずはツタ、クレマチスで壁や塀を覆い、植物それぞれの高さにバリエーションを持たせているところにテクニックが伺えます。 庭というと平面的に捕らえがちですが、一枚の絵を見るようにアレンジされているのですね。モアさんは植物だけでなく、大小の植木鉢他チムニーポット(テラコッタ製の煙突の先端。高さ約70センチ)を駆使していました。 その中心に彫刻を置くと、周りに小さな風景ができ上がります。モアさんのお庭はマスタープランに支えられた小さな風景のパッチワークといってもいいでしょう。 20年がかりの作品をすぐにまねすることは難しいですが、小さなモチーフ作りなら少しずつ始められそうな気がします。 「ベランダは小さな庭、植木鉢はミクロな庭なんだ」というイギリス新進ガーデナーの名言もあります。小さな庭でもできる、心がなごむ自然の風景を作ってみてはいかがでしょうか。








